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谷口
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 教授

谷口 敦夫 (たにぐち・あつお)

痛風予備群「高尿酸血症」

体内でのプリン体が増えたり、腎臓での尿酸の排せつ量が減ってしまうと、血液中の尿酸の量が増えてきます。尿酸値が7.0mg/dLを超えると高尿酸血症と診断され、関節の中で尿酸の結晶ができはじめます。7.0 mg/dLを超えて尿酸値が高ければ高いほど。期間が長ければ長いほど痛風発作が起きやすくなり、合併症のリスクが高くなります。

高尿酸血症・痛風の経過

高尿酸血症の状態のままでいると、ある日突然、痛風発作に襲われます。痛風発作は夜中から明け方に起きることが多く、痛みのピークは発症後2~3日間続きます。その後、2週間以内に痛みはなくなります。しかし、適切な治療を受けて生活改善しないと、痛風発作を繰り返すようになります。(間欠期) そして、だんだん発作の間隔が短くなり、やがて常に痛みや腫れがある「慢性期」になります。繰り返し痛風発作が起きる部位では、骨や関節破壊変形があらわれるようになり、関節周辺や皮下には痛風結節と呼ばれる、こぶのようなものができます。そして、さまざまな合併症が起きてきます。

痛風発作がおこりやすい場所

痛風発作が起こりやすい場所としては親指の付け根・足の甲、ひざ、足首、アキレス腱[けん]などです。最初の痛風発作の7割は足の親指の付け根に起きます。

痛風の合併症

尿酸の結晶は腎臓に溜まると腎障害を引き起こし、尿路や膀胱に溜まると尿路結石を起こします。また、痛風ではメタボリックシンドロームに陥りやすく、高血圧肥満・脂質異常症・糖尿病など、多くの生活習慣病を併発しやすいことがわかっています。その結果、動脈硬化を起こしてしまい、心筋梗塞脳梗塞などの命に関わるような病気につながってしまうのです。

高尿酸血症の検査と治療

痛風発作を起こしていない痛風予備群の人は、血液検査で「尿酸値」、尿検査で「尿中尿酸濃度」を計測します。これらは「高尿酸血症」を診断するうえで重要な検査です。また、高血圧脂質異常症糖尿病などの生活習慣病狭心症・脂肪肝などの合併症のチェックを行います。血糖・脂質・腎機能・肝機能などを調べ、心電図や内臓の超音波検査も行います。他の生活習慣病や合併症がなければ治療は「生活指導」、食事療法・飲酒制限・運動の推奨が中心となります。

痛風の検査と治療

一方で痛風発作を起こした人は「血液検査」「尿検査」にくわえ、「X線検査」を行います。痛風に似た症状の偽痛風変形性関節症などとの鑑別をする必要があるからです。そして、痛風であることがわかったら、尿酸クリアランス検査が行われます。これは尿酸が増える原因と腎機能を調べる検査です。これによって「尿酸をできにくくする薬」か「尿酸の排せつを促す薬」のどちらを選択するかを決めます。また、痛風発作を起こしている場合には尿酸値を下げる薬を使わずに、発作を抑える薬を服用します。発作を抑える薬は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)で、痛みがなくなるまで服用します。腎障害などでNSAIDsが使えないときには、副腎皮質ステロイド薬を使用します。痛風発作の前触れに気付いたときには、未然に発作を防ぐ事ができるコルヒチンという薬を服用します。
尿酸値6.0mg/dL以下を長期間維持できれば、関節に溜まった尿酸は徐々に分解されて、溶けてしまうと考えられています。このように痛風は治ることが期待できる病気なのです。

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この記事は以下の番組から作成しています
きょうの健康2016/5/24(火) 放送
痛風 最善の対処法「こうして治療」
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病名
痛風
症状
関節痛はれている
部位
関節
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